2018年8月23日(木)
夜中3回トイレに起き、4回目が午前6時15分だった。
そういえば夜の10時に点滴の管を全部外され、左手が少し楽になった。自由に腕を動かせる感覚、久しぶり。こうして少しずつ、チューブフリーの日が近づいていくのね。嬉しい。
夜中3回も起きていると、じっくりと寝られないから、その間いろんなことを考えていた。人間、やることがないと、いろんなことを考えるものなのかな。考えるくらいしかすることないということか。
考えていて出てきた言葉が、
人生をリセット。リメイクしよう。
今を生きる。
人生一度きり。
そんなことをノートに書いている。(そして、のちに私のメインブログのサブタイトルに、ポルトガル語で「人生一度きり」とつけたのだった)
本当にね、手術後のカラダは、以前のわたしのものとは違っていて。好きでそうなったわけでなくて、強制リセットみたいな感じなんだけれども。人生のリセットとも言える感じでね…。ちょっとパワーダウンしたことは否めないけど、リメイクはまだまだ出来るよね。人生一度きりだしね!と。そんなことを、長い夜に思っていたわたし。
さて午前中、待望の!洗髪タイムとなった。
実に…4日ぶりかな。もうね、ペトペトだよね、髪が。エアコンで温度管理されている病院とはいえ、さすがに4日もあたま洗わないとね…
さすがにまだチューブがいろいろ体についているので、自分では洗えなくて。看護師リーダーのMさんが洗髪ルームで洗ってくれた。いろんなお話をしながら。主に、Mさんがここに至るキャリアを伺っていた。そう、わたしはキャリアコンサルタントだから、看護師さんたちがこの仕事を選んだ理由とかやりがいとか、そういう話を聞くのが大好き!もちろん、話したがらないタイプの方にはあえて聞くことはないけれど、だいたいの方は、喜んで語って下さる。そして、みんな、優しいんだよなぁ…。
この日、奥のベッドのAさんが退院された。
ロングのワンピース姿で、元気に、笑顔で!お迎えに来られたご主人と、仲良く病室を出て行かれた。Aさんにはいろんなことを教わった。私より一足先にストーマ閉鎖の手術を今回受けた方。私がこれからたどる道を、見せてくださった方だ。
Aさんの失敗談もとても役立った。最初の手術の1か月後に、食べすぎてイレウス(腸閉そく)になり激痛で病院に駆け込んだことがあると。なので、退院後のドカ食いはダメよ!と身をもって教えてくださった。そうなんだ…怖いな。
わたしも笑顔でAさんを見送ったつもりだけど、最後に握手をしたら、なんだか淋しくなって涙が出た。そこにいた看護師のMさんは、そんな私の背中を優しくさすってくださって、また涙。こういうとき、人は背中さすりに泣かされるのだね…。手術直前に、家族と別れて涙したときの看護師さんも、黙って肩をとんとんして励ましてくれた。ボディタッチ、大事。
その後、わたしはもうひとつの管が外された。おへその隣に造設されたストーマ(人工肛門)につながれていたチューブを外し、代わりに排泄物を入れる袋が装着された。あとはチューブがもう一つだけとなった。ポシェット一つの身となり、かなり移動が楽になった。
ちょうど今日は1階ロビーで、「がん患者のための歯科講座」なるものがあり、たまたま通りがかったら始まる寸前で聴衆が数名しかいなかったこともあり、誘われて聞くことにしたのだった。
主に、抗がん剤治療中は口の中がデリケートだから歯ブラシが口に入るだけでも辛いことがある、だからこういう器具で磨くのが良い…とか。
手術の麻酔の際に歯がぐらぐらしていると危険だから、事前に歯の治療が必要、とか。
全然知らない話ばかりだった。がんとお口の健康、実は相当かなり大事みたいだ。
午後、私と同じ日に大手術を受けた同室のBさんがICUから戻ってきた。まだまだ器具がたくさんついていて、しんどそうに見える。12時間に及ぶ大手術だったそうだ。わたしの3倍だ。手術前は確か8時間と聞いていたけれど、長引いたんだね…。
Bさんのところには娘さんや息子さんがやってきて、少しずつお話をするうちに、元気な様子が戻ってきたみたいで。私も安心した。家族の存在は大きいね。
そして我が家の3人組(母・妹・次男)もやって来てくれた。またタリーズに移動して、他愛のない話をした。本当に他愛のない話。でも、そこから笑いが生まれる。一人じゃ笑えないけど、みんなと一緒だから、笑える。ありがたいことだなぁ。私は幸せだ。
母は、娘がガンだなんてこと、ほかの人には言いにくい…と言っていた。そうだよね。私はもうすっかりガンに慣れたけど、みんなはまだ慣れてないよね。だからショック受けるよね。私も、FBの友達が少しずつ様子に気づいて心配の声をあげてくれていて。いつどうやってカミングアウトするものか、と悩む。入院生活はまだまだある。もう少し考えよう。
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夜になり、夕食後の散歩で病棟内をうろうろしていたら、窓の外を見ているおじさんがいた。「何が見えますか?」と声をかけたら、月の下にくっきりと金星の姿が!
「今が一番よく見える時期ですよ」とおじさんは教えてくださった。そこから病気の話が始まり、これまた壮絶な闘病ストーリーを語って下さった。余命宣告された経験があること、大動脈瘤もやったこと、もう俺は長くないから…と最後はカラっと笑っていらした。いや、すごくお元気そうに見えるんですけどね。そうなんですかね?
各地の病院事情にとても詳しくて、固有名詞をいくつも挙げて紹介してくださった。私は思わずメモメモしていた。
病棟内で誰かに声をかけると、もれなく長いストーリーが始まる。入院中、みんな誰かと話したいんだよね。うん、わたしもそうだもの。患者同士、わかりあえる共通の気持ちみたいなのがあるから、わたしもどんどん聞きたいよ。
きのう家から持ってきてもらった、お気にいりのピンクのパシーマ(薄い綿のキルトケット)は手触りが良くてやはり落ち着く。
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初めての入院だから勝手がよくわからなかったけど、みなさん、自宅から枕やら可愛いバスタオルやら、いろんなベッド回りグッズを持ち込んでいるらしかった。なので私もお気に入りを調達してもらったのだ。うん、これはいい。よく眠れそうだ…。
入院中は、なるべく自分の好きなモノに囲まれて、触れているのが幸せみたい。
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