2018年8月21日(火)
手術翌日の朝の様子は、記録がないから思い出して書いている。体中にいろんな管がついていて、鼻には酸素、左腕には点滴。身動きがとれず、本当に寝たきりとはこのことで。さすがに出産時もここまで寝たきりにはならなかったよね…。よって、生まれて初めての経験をしている。文字を書く、スマホを見る、パソコンを立ち上げるなどもってのほかである。そんな気力なんて、ない。
本当に。おとといまで元気いっぱいだった人間が、全身麻酔で臓器を取ると、こんなにも弱るものかと。我ながらびっくり。いや、もう、自分が一番びっくりしているよ。
この日のことは、病院が作成した毎日のやることリスト「患者様用クリニカルパス」を見て思い出している。このクリニカルパスというものは、入院中いちばんよく見ていた資料だ。患者の時間割であり、これさえあれば今日一日の流れが予測でき、安心できる。
朝、ポータブル式のレントゲン機械が部屋にやってきて、ベッドの上でレントゲンを撮ってくれた。同室の人はその間、廊下に出されていた。血液検査のための採血もあった。
酸素吸入の管が鼻に入っていたけど、朝になって抜いてくれた。酸素があると呼吸が少し楽で、安心な感じだったけど、抜かれても別に問題なかったので、ひとつチューブフリーになれて楽になった。
術後から続いている「痰のつまり」は、まだ続く。痰は飲みこまずになるべく吐き出すというけれど、吐き出すときお腹に力が入って、切ったところが痛いのだよね…。強く力を入れられない。痰が自力で出しにくいということも、自分がこんなに弱ってしまったのか~と情けなく感じるポイントである。時々、看護師さんに水を持ってきてもらって、うがいをした。まだ水を飲んではいけなかったので、うがいだけ。それでも口の渇きもいやされ、だいぶ、ラク。
そしてこの日、待望のジュースである。朝食にりんごジュース。
なんせ丸2日食べてなくて、水も飲めなくて。だからこのジュースはもう…ありがたかった~
でもほんの一口よ。しかも、恐る恐る口をつけた。なんとなくね、胃腸が久しぶりに働くわけだから、びっくりするといけないよね、なんて思いながら。まぁ、言ってもほんの50ccくらいの量なんだけど、何回にもわけて、大事に大事にいただいた。
午前中、看護師さんが身体を拭いてくれた。ベッドに横になったまま、わたしは身体を横に傾けるだけ。まさに介護されている感じ。誰かに全身をあずける、と言う状態が手術後続いていて、それは慣れないことだから私にとっては決して居心地がいいことでなないけれど。ひたすら、すいませんねぇ…という感情だ。
歯磨きは自分でした。これもベッドでね。水をビニール袋で受け止めてもらって。
これはかなりスッキリさっぱり、気持ちよかった。お口の清潔、大事!
そして午後、夫と母と次男が来てくれた。まだまだ弱々しい状態の私だから、顔見せするのもなんだか…という感じなのだけれども、やっぱり来てもらえると嬉しい♪
しかし、この後、ますます情けない現象が私を襲う…。
看護師さんが来て、じゃあちょっと立ち上がって歩いてみましょうか!と言う。正直、まだ目もうつろで、だるさマックスで、こんな状態であるけるのか???と疑問だったわたしだけれど、やってみないことにはわからない!
というわけで、看護師さんのガイドのもと、まずはベッドのふちに座ってみた。
座れたけど…
なんかちょっと気分が…。ぐるぐるする感じがありますが…。
こんなもんなのかな?
と思って、看護師さんの支えのもと、立ち上がってみることにした。
…と。
気分の悪さは一気にアップ!
吐き気も感じるよ!
でもとりあえず頑張る。
その場でまずは足踏みを、と言われ、足踏みするも、
なんだか脂汗が湧き出てきた…
こ、こわい。なんなのわたしのこのカラダ!!!
顔色もかなり悪かったんだろうな。看護師さんはそんな様子を察知して、今日は無理しないで横になりましょう!とすぐに足踏みをやめさせ、ベッドにと戻らせてくれた。
なんてこと。
わたしは、立って歩くことすらできないなんて。なんて屈辱なの!
思いがけず、涙が出た。あまりの情けなさに、涙が出た。
その様子を夫たちも見ていたから、なんて可哀そうな妻に、母に、娘に見えたことであろう。
そんな風に思わせてしまったことにも情けなさがつのり、みんなが気の毒で、また涙ほろり。
そんなわたしに看護師さんはすかさずフォローの声をかけてくれたけどね。若い方は特に、ずっと横になって急に立ち上がったら、急激に血圧が低下して、こういう症状が出ることがあるんですよ。大丈夫ですよ、と。起立性低血圧、とか言ってたかなぁ。
若い方なのか?わたし?と思いつつ、そうだそうだ、この病棟では若さランキング上位なんだった、ということを思い出し、納得することにした。
ひとは3日にしてこんな体になるんだなぁ。
手術って。手術って。想像以上に大変だ。辛い。
こんなんでわたし、いつかは普通に生活できるようになるのかなぁ。
ちなみに同じ日に手術をした向かいのベッドのおばさんは、もう立って歩けている。
なんだかちょっと敗北感も覚える。
人の身体はそれぞれで、がんもそれぞれで、回復の速度もそれぞれ。なんだけど。
歩けない自分を、どうしてもひとと比較してしまう弱い自分がそこにいた。
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