2018年7月31日(火)
夜4時半に目が覚めた。やはり、少し気が高ぶっているのかな。
朝は桃とヨーグルトとブルーベリーを食べて、7時に家を出た。
ここは東京ビッグサイトのある駅だね。
病院に入る。外来受付へ行き、番号札を取る。
わたしは3番。おお、wifiがロビーで使える!
ここに来ている患者さんはみな、がんなのか…
そしてわたしも、がんなのだ…
なんだか、まだピンとこないよ。
何枚にもわたる問診票に記入する。こんなに何枚も問診票を書いたことはありませぬ。
身長体重とか、既往歴とか、ベーシックなことに加え。がんの病院らしいな…と思ったのは、親兄弟にがんの人はいるか、ということを書くこと。あと珍しいところでは、ストレス解消法を聞かれた。選択肢がなかなかに興味深いよ…日記を書くって…そしてそれに●をつけてる私って…まぁブログを日記ととらえて、のことだけれど。
その後、看護師さんとの面談があり、家族構成とか、キーパーソンは夫でいいかとか、職場に通えなくなるのは大丈夫かとか。そのようなことを確認された。それから、海外に行ったのはいつかとか。いろいろと聞かれていくうちに、わたしの中の患者感がどんどんアップしていく。そうか、わたしはこんなに元気だけど、「患者」なんですね…。
面談ではアルコールの量も聞かれたけど、これ、いやだね。お酒を好んで飲んでたのは自分だけどさ、もしがんになったことを誰かに責められるとしたら、ワインの飲み過ぎくらいしか、直接的に思い当たる原因要素はないからね…
実際には、誰もがんになったわたしを責めることなどしないけどね…。
9時半少し前にようやく診察室に呼ばれる。センター長の福長先生だ。ウェブ上で見た写真どおりの、目がくりっとしてイキイキとした先生。先生からは、いつ大腸内視鏡検査をしたのか、症状はいつからか…などを聞かれた。
そして、クリニックでやった検査結果の写真(腫瘍の様子)を見て、これはおそらく手術になるけど、詳しい検査をしてみて、がんの深さやリンパ転移を調べないとまだはっきりとしたことは言えないと。深さがそれほどなければ、内視鏡で切除する方法もある。その場合は体が楽だし、人工肛門もないと。外科的手術だと、一時的に三カ月くらい人工肛門にして、もう一度手術して人工肛門を外すことになる可能性があると。
じ、じんこう、こうもん????
まさかここにきて先生から人工肛門のことを聞くとは。私には関係ないもの、と思っていたのに。内田春菊さんの「がんまんが」に出てきた人工肛門のこと、その存在は知ってはいたけど、私はそうならないとなぜか思い込んでいたよ…。
さて。
今日はたくさん検査をして、最後にもう一度先生とお話をするらしい。
先生の感じは悪くない。関西弁テイストの話ぶりはむしろスキな感じ!
今後のわたしの懸案事項だった、お盆の北海道への帰省についても聞いてみたら、別に行っても良いと!良かった!だってもう飛行機押さえてたし、北海道の両親も楽しみに待っているし。何より、がんのことを、両親には会って顔を見て伝えたかった。だから、お盆の帰省はわたしにとってマストだった。行っちゃだめ!って言われたらどうしよう…と思ってたから本当に良かったよ…。
ただMRIが混みあっていて、8月の13か14でしか予約が取れないと。困ったな、横浜に戻るのは14日の午後の便にしている。でも仕方ない。とりあえず14日の一番遅い時間、15時でMRIをお願いする。飛行機の便、変更しないといけないな…。
ちなみに先生のお盆休みを聞くと、13の週は病院には来ないと。
ということで、一応、手術をお盆明けの20日月曜日に入れてもらえた。これは結構びっくりだった。すぐこんな風に手術の日取りが決まるんだね。先生は、わたしと話しながらパソコンで手術室の空きなどを見ていた様子。病院もずいぶんとシステマティックなんだな…。
続いて看護師さんから今日の検査の流れについての説明を受け、二階に上がって最初の検査開始。まずは尿と血液。機械に診察券を通したら、機械から紙コップ(わたしの名前入り)が自動販売機みたいに出てくるシステム。その次は血液検査。今まで見たことない量の試験管の数だ。6本ぶんくらい取った。
それからレントゲン。正面、横向きに加えて、診察台に仰向けに寝て上からお腹を映すのを初めてやった。
次の肺機能検査では、鼻をつまんで口にマウスピースをくわえて、強く吸って吐いて…をやった。結構きついな、これ。
その次の負荷心電図は、普通に診察台に横たわって心電図を取ったあと、ウォーキングマシンで時速4.8キロで3分歩くやつをやった。ブラジルの検診では、もっともっとキツイやつをやったなあ、割と本気走りさせられたなぁ…などと10年近く前のことを思い出す。
続いての超音波検査は、会社の健康診断でもやっている普通の感じ。お腹にゼリーをぬりぬりして、器具をぐりぐりと押し付けるやつだ。ちなみにこれでは大腸は見えないんだそうで、ほかの臓器を見ているんだとか。一応、質問してみた。
そうか、間違いなくがんがある私の大腸だけでなく、ほかの臓器にもがんがあるかどうか…を、今日、あの手この手で調べているというわけだな。
ここまでやって、最後のCT待ちの身となった。
とにかく、お腹が空きすぎ…でも、CTが終わるまで食事はできない。
CTは14時40分からだ。まだ1時間あるよ…。
待ち時間には夫とタリーズで過ごした。wifiがあるし、明るいし、いい感じ!インフォメーションコーナーがすぐ隣にあり、がんに関するさまざまな本や資料が読めて非常に役立つ。
気に入った本がすでに何冊も。
「がん研有明病院の 大腸がん治療に向き合う食事」
これがいい。
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患者さんのための大腸癌治療ガイドライン(2014年版) 大腸癌について知りたい人のために [ 大腸癌研究会 ]
2時半近くなり、さぁそろそろ二階へ…と思ったら、そうだ、2時からロビーコンサートがあるんだった!さっき立て看板のお知らせを見たことを思い出し、ロビーに立ち寄った。おそらく母娘?と思われるピアニストとソプラノ歌手が、朗々と歌声を響かせていて、ちょっとした人だかりが出来ていた。ちょうど最後から2曲めの、「舟歌(バルカローレ)」だった。そして最後は全員で「うみ」を合唱。夏の童謡の、うみ、である。これには思い切り本気歌いをした。気持ちよくて、でも、歌っててなんだか泣けてきた…
がん患者による第九コンサートにも出たいな…病院にポスターが貼ってあった。
さてお待ちかねのCTの時間が来た。CTは生まれて初めてだ。
まず、右腕の静脈に造影剤を注入する。これは体が熱くなります、と言われたけど、たしかに!注射針が入り、液体が身体に入ると、カーっと身体が熱くなる。とても不思議な熱さだ。
検査は、まず最初は造影剤なしで3回くらい。次に造影剤ありで3回くらい、輪切りの機械に全身を通された。
それはとてもあっけなく終わった。痛くもかゆくもないけど、造影剤で体が熱くなる感覚はお世辞にも気持ちいいものではなかった。
これで検査は全部終わったけど、どの検査技師さんも、めちゃくちゃ感じがいい。検査の腕がいいのはもちろん重要ポイントなんだろうけど、皆さんのあの「感じの良さ」はすごい!
医療従事者のコミュ力、大事。特に、ここの女性スタッフの対応が、笑顔が、みんなすごくいい。
ここを選んで良かったね、と夫も言っている。この病院に流れる温かな雰囲気を、彼も感じたのだろうか。患者全員が「がん患者」だからこそ、こういう素敵なスタッフを擁しているのだろうか。どんな社員教育してるんだろうか…。そんなことにまで思いが及ぶほど、本当にみなさん素敵だった。
さて、この日を締めくくるのは、主治医による再度の問診である。
実はCT検査直後にもう診察室から呼び出しがかかっていた。早いな!
すぐに着替えて1階へ降りて、受付に、今検査を終えて戻った旨を伝え、中待合室で待つ。すると、割とすぐに呼ばれて診察室へ入室した。
「今日の検査結果からは、転移は見当たらない。数値も問題ない」と、まずは先生から告げられた。そしてもう、今さっき受けたCTの画像が、先生のPCのモニタに映し出されている。早っ!
先生はモニタを見ながら、割と詳しく、画像の見方を私たちふたりに説明してくれた。がんの部分はそこまで深くは見えない、でも、リンパにがんが入ってるかどうかは今日の段階ではまだわからない、と。
がんの深さがそこまで深くない、という言葉をいただいて、とりあえずホッとした…。
だけど、まだリンパ問題は分からないからなあ。抗ガン剤をやるかどうかも、リンパが決め手だそうだ。
ただ、内視鏡ではなく、外科的手術になりそうなのは確かっぽい。
そこで先生は肛門の内診をした。ベッドの上で丸まって、おへそをのぞき見る感じの体制を取る。内診で、あ、これだな、近いなあ…とつぶやく先生。…そうか、わたしのがんは、そんなに簡単に触れるところにあるのか。
これは人工肛門を一時的に作るのは逃れられないかも。
そばについていた夫は、私よりむしろ盛んに、手術後の社会復帰について早くも質問している。
とりあえずお酒は、やめといた方がいいらしい。
今後はさらに検査を重ねることになる。
おそらく、8月2日の大腸内視鏡検査でおおかたの治療方針が決まり、7日の診察で確定報告を受けられるのだろう。そういった今後のスケジュールがわかって、今日は一安心。先が見えるって、心理的にとても安心するね。
わたしはその後、明後日8月2日に控えた大腸内視鏡検査の説明を受ける。もうすでにクリニックで一度おしりカメラはやっているから、勝手はわかっている。ふんふんふん…と聞き流す。クリニックと違うのは、自分で前日用の検査食と穴あき紙パンツを買うという点。病院内のファミマで、合計1480円ほど。こういうのって検査費に含まれないんだね…ちょっとびっくり。
そして病院を出る直前に、機械で会計を済ませる。プラスチックの診察券を通すと、金額が出て、現金かクレジットカードかを選べる。今日は23360円ほどかかった。検査、たくさんしたものなあ…
ちなみに、最初のクリニックから今日の検査まで、すでに5万くらい使ってるよ。がんはお金がかかるなあ。
とにかくお腹ぺこぺこだったので、院内のタリーズでエビとジャガイモのジェノベーゼとアイスオレを遅いランチとして。本当は外のどこかで食べようと思ったけど、このあたり飲食店あまりなさそうなので。
やっと少し落ち着いて、周りを見渡す余裕ができる。パジャマ姿の患者さんも少しいる。みんなお揃いのパジャマなのかな。足元はクロックスのひとが多いかな、とか。ここでも冷静に観察している私。
夫は少し先に病院を出て、仙台に戻った。
やはり側にずっといてくれて良かった。一人でもたぶん大丈夫、というか、検査的には全然一人でも大丈夫だけど、やっぱり、待ち時間になんだかんだと話ができたのはいいし、何より、彼のなかの心配の塊が、今日一日でグッと縮小されたと思う。私の検査を待っている間、ずっとガン関連の本を読みあさり、かなり知識を頭に入れていたようだった。先生の話に積極的に質問し、ひとつひとつ、自分の中にある不安の種を取り除いていたように見えた。
がんは、患者本人より、支える側がつらいと何かの本に書いてあった。夫を見ていると、本当にそうだと思う。私の課題は、今後、わたしの周りの大切な人たちにどうやってがんを伝えるか。早く伝えて、みんなにも検査に行ってもらいたい。そこなんだよね。私がいま一番伝えたいことは。でも…まずは相手を驚かせるし、ショックも受けさせるし。伝えるシーンを想像すると、それだけで辛くなる。
でもあれかな、私がひたすら普通に明るく打ち明ければ、みんなも明るく受け止めてくれるかなあ。
まずは妹に。
それから、近くに住む夫のお父さんとお母さんに。
北海道に行く前に、近くにいるこの三人には直接会って話そう。
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