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そして、わたしは楽器になる…がん患者はなぜ第九を歌いたくなるのか?【その2:サントリー一万人の第九 練習を重ね、練習が楽しくて仕方なくなる♪】

初回のレッスンをまさかの日程勘違いでぶっ飛ばしてしまい、ブルーになったのは一瞬のこと。その後は順調に回を重ね、なんとかついていけるようになった。

(前回の記事はコチラ)
そして、わたしは楽器になる…がん患者はなぜ第九を歌いたくなるのか?【その1:サントリー一万人の第九当選から初回練習参加まで】

そして、最初は
お経にしか聞こえなかったドイツ語での第九の歌詞が、だんだん覚えられるようになってくるから人間って不思議。

もちろん、覚えるための努力は欠かしません!
音源を聞いて聞いて聞きまくり、楽譜を見て口に出す。毎回の練習には集中して本気で取り組み、「今日はココを覚える!」と心に決めて、歌う。

そのあたり、もともと語学オタク気味なところがある私には、やり始めるとそんなに苦ではないのね。(ドイツ語はブラジル在住時に、ブラジル人と一緒に語学スクールで半年ほど初級を学んだことあります。時間の表現の仕方にぶっ飛んだ覚えしかありませんが。)

そうなるともう、練習が楽しくて仕方なくなるんですね。

自分が「楽器になる」という感覚。
これがね、もう、何というか初めての感覚でね。
オーケストラの一部になって歌うという初めての体験がね、カラオケのソロでも、合唱コンクールの一員でもなくて、もう本当に初めてで。嬉しすぎる。
私の声が、交響曲を構成する一部になる!
たとえそれが1万人分の1の声であっても、私は楽器になるんだ!!

…想像するだけで、素敵じゃないですか?
しかも、指揮者は佐渡裕さんですよ。情熱の佐渡さんの第九で歌えるんですよ。

最初は、こんなの歌えるようになるのかな…
思ってたよりハードじゃないですか第九って…
もっとお気楽な感じで、みんなで歌おうイベントくらいな感じでとらえていたのに、結構かなり本気なんですけど…(特に指導者の先生の本気度が半端ない~)

という具合に、半分、恐る恐るのレッスン参加だったのが、歌えるようになってくると本当に楽しさが倍増するんですね。

何が楽しいって、先生の熱いベートーヴェン愛に触れる時間が楽しいの♪

私たちの築地Aというグループを指導してくださっているのは、下村郁哉(しもむら・いくや)先生。
先生曰く、世界一「第九」の合唱指導をなさっているんだとか…。確かに、このサントリーの第九をはじめ、国内の数々の合唱団で第九を指導する第一人者なんだそうです。
ご自身の合唱団もお持ちですよ。思わず入ろうかと思っちゃうくらい、先生の指導が好きですわたし。)

しかも、日本ベートーヴェン協会の会長でもいらっしゃるという…もう、ベートーヴェン大好きな先生なのです。指導の合い間に入る小話がもうね、たまらないんです。心からベートーヴェンを尊敬し、愛し、崇めている様子がビシビシと伝わって、それはもう気持ちいいほど。
サントリー一万人の第九にかける先生の思いはこちらの記事で読めます。

練習回数がまだ浅いうちは、正直、歌詞を覚えたり音程を覚えたりすることに必死で、先生の素敵な小話をメモする余裕などなかったのだけれど、最近は、しっかりと楽譜の余白に名言集を書き込んで見返しています。

第九の歌詞についてわかったことがたくさんありました。
ベートーヴェンが第九に込めた思いが、少しずつ、わかってきました。以下、先生のお言葉をメモしたものから抜粋して。

◆「いつも前を向いていなさい。必ず希望はあるよ!」

◆ベートーヴェンは、戦争だらけの時代に生きながらも、
「必ずまた幸せが来るよ!そうだね!フロイデ!」
って、仲間に呼びかけ合ってる。

…このことだね。
前を向いて生きることの大切さ。希望を持って生きることの素晴らしさ。
このテーマが、がん患者と第九を繋ぐもの、なんだね…。

合唱を入れたのは、
ベートーヴェンの思いを、人間の声を入れないと残せない、と思ったからだとか。

◆ソプラノは天使、アルトは母。
テノールは英雄、そしてバスは父。
自分のパートをそんな風にイメージして、声を響かせなさい…と。

…はい、私はソプラノなので、天使の顔をして歌いたいと思います。(気持ちだけはね)

歌の解釈も、先生が語るととてもわかりやすい。

そして、歌い方についての指導も本当に素敵。

◆音楽っていうのは、その瞬間でしかない。だから、相当集中して音を出さないと!

◆音の裏にある言葉、ストーリー、映像が見えてくるような音を。

◆音楽には必ず目的がある。文章で歌う。風景が、映像が見えてくる歌を歌う。

…ひとつひとつの指導に、あぁ、本当にそうだなぁ、と。歌の先に風景が見える、そんな歌を、私も歌いたいなぁと心から思う日々なのです。

先生は、
【ベートーヴェンは神秘。我々がたどりつけないところに行っている。彼を超える人はいない。】
【第九の意味、背景、ベートーヴェンが残してくれたものを一万人でどう歌い、伝える?!】

そのような壮大なことまでおっしゃっています。
正直、まだまだそこまでのものを背負って、第九を歌える状態には至ってませんが…
少しでも、ベートーヴェンの思いに近づくために。

今を生きている喜びをかみしめ、表現するために!
第九に出会えた幸せ、1万人とともに声を合わせて音楽を作り上げることが出来る幸せを、12月1日の本番に向けて
一歩一歩、大切に積み重ねてゆきたいのです。

(燃え尽き症候群にならないよう注意しなきゃー)

私も、下村先生の熱いベートーヴェン愛に近づくべく、本を読んでみようと思いました。
早速2冊、購入してみた。今なら、少しは理解できるかなぁ、ベートーヴェンの残したものとは…