嬉しかった
生きてる
生きてる
生きてる
今日も一日が終わった
あとは
すべてが未来…
(本書71ページ、そして表紙にも書かれている言葉より。)
もうね。
この言葉を読むだけで涙しました。
わたしは大腸がん、しかも一番初期である「ステージ1」という段階で見つかり、幸いにも今は元気でふつうの暮らしができている。
それでもここに至るまで、「嬉しかった 生きてる 生きてる」の感覚を何度も持ったから。
著者のまぁりんさんは、ステージ4。私の何倍も何十倍も何百倍も…未来が見えなくなり、絶望し、辛い気持ちを抱いただろう。そう思うと、ここに書かれた言葉「嬉しかった 生きてる」がどれほどに重いものか。どれほどに大きいものかと思う。
amazonで注文し、翌日に本が届いて、ひも解いて手に取ったとき、
その本があまりにふわっと軽いことに実はちょっと驚いた。
ステージ4のがんサバイバーさんが綴る闘病記は、きっとずっしりと重くて、その思いは何百ページにも及ぶものだろうと、なんとなく予想していた私。その予想は裏切られ、ちょっと、拍子抜けしたというのが正直な第一印象。
でもね、さいしょのページを見てすぐわかった。
この本を届けたい相手は、「がんになったあなたへ」
「わたしもいます 頼って構わないから」
その優しい言葉で、
いっぱいの向日葵でつくられたハートのイラストで、前書きが締めくくられていた。
もうそれだけで、がんになったばかりの「わたし」は、どれだけ救われるかと思う。
本が軽いのは、がんになったわたしが、ベッドで楽に読むことが出来るようにの配慮から。
読み進めるうちに、同じがんを経験したものとして、共感するシーンがいくつも出てきて。
思い出して涙してみたり、わたしだけじゃなかったんだあの思いは、とホッとさせられたり。
「そら」
「眠れない」
「いま できること」
「退院」
のくだりは特に。わかるなぁ。わかるなぁ。
うなずきが止まらない。
そして素晴らしいのは最後の章。
「がんになったわたしが伝えたいこと」
シンプルで、でも力強くて。
あれだけのわずかなページ数に、ぎゅっとこめられた、がん経験者だからこそ伝えられる「生きるヒント」たち。素晴らしいなぁ。
わたしも、がんになってから、伝えたいことはもう山のようにあるけれど。山のようにありすぎて収拾がつかなくなっていて(苦笑)
こんな風にメッセージにして、世に届けられるって。いいなぁ!素敵だなぁ!と素直にちょっとジェラシー感じちゃうほどです。
パステルカラーの優しい絵には、まぁりんさんの思いが、言葉と同じように乗っかっていて。絵が持つチカラも、しっかり受け止めさせていただきました。
不思議なことに、がんの種類もステージも違うわたしとまぁりんさんだけど、そこに流れるBGMはおんなじユーミンのあの曲。わたしは退院して家に久しぶりに帰ってきたとき、あの曲が無性に聞きたくなって。それからしばらく私の中にユーミンブームが起こっていました(笑)
わたしが入院していたがん研有明病院には、患者さんから寄付された膨大な数の書籍あり、図書館で借りるような感覚で自由に読むことができるんです。
わたしはぜひ、この本を置きたい。いちばん読んでほしいひとたちが、いちばんたくさんいる、あの病院に。