大腸がんって、どんながん?

大腸がんの治療について:私の場合、腹腔鏡手術+一時的人工肛門でした

がんと一口に言いましても、それが身体のどこに宿るかで呼び方も変わるんですね。わたしの大腸がんのように、臓器名+がんといったわかりやすいものから、池江璃花子選手が闘っている白血病は血液の「がん」ですし、脳腫瘍も脳にできた「がん」ですよね。そう思うと、がんというのは、ずいぶんバリエーション豊かな病気のように思えます。

 

共通している特徴は、

・がん細胞というものはいつまでも増え続ける

・発生した部位から、別の場所に転移できる

ということだそうです。なるほどですね…。それ自体はシンプルといえばシンプル。

 

ただ。

がん細胞が身体のどこに発生するのか。

そのがん細胞の性質(顔つき、とか言いますね)はどういうタイプなのか(おだやかなのか、悪質なのか…等々)。

がん細胞が発育してカタチになったとき、身体のどこまで深く入り込むか(浸潤:しんじゅん と言います)。

 

このへんはもう、完全に個人差の世界なので、私のがんは私のがん。堀ちえみさんのがんは堀ちえみさんのがん。私と堀ちえみさんは別人であるのと同様、がんも、ひとつひとつ違うんですよね。まぁ、人間ひとりひとり全員違うひとなんだから、そこに棲むがんがひとつひとつ違うのは、当たり前と言えば当たり前…。

 

ですので、誰かと比べたり、パターンに当てはめて思い込んだりするのは良くないな、と思います。すい臓がんだから難しそう、大腸がんは治りやすそう、とか言うのも全然見当違いです。本当に一人一人違うんです。

 

そのことをまず前提としてわかっていただいた上で、私が受けた大腸がんの治療法について読んでいただきたいと思います。

 

医師でも看護師でも専門家でもない私ですが、がんと知った7月末以降、8月の手術、そして11月の手術に至るまでのほぼ3か月は、ずーっと頭の中は「がん一色」で。とにかく参考文献を読みまくり、ネットでも調べまくり、主治医の先生にも質問しまくりました。おかげさまで有明病院には素晴らしい資料コーナーがあり、結構な専門書も置かれていましてね。元記者としては、資料読み込みが楽しくて!

いや、それが自分自身のことなので、楽しいだけではなかったのも事実ですが…(中には厳しい予後などが書かれており。読んでて辛くなる本もあるからね)

 

ちなみに、気に入って購入した参考文献たちは以下の通りです。


がん研が作ったがんが分かる本新装版 初歩から最先端、そして代替医療まで [ ロハスメディア ]

大腸がん (よくわかる最新医学シリーズ) [ 福長洋介 ]

がんを告知されたら読む本専門医が、がん患者にこれだけは言っておきたい”がん”の話【電子書籍】[ 谷川啓司 ]
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手術日までに患者が知りたい大腸癌 検査から治療,術後経過,手術費用まで/腹腔鏡下手術 (わかりやすいインフォームドコンセントシリーズ) [ 市原隆夫 ]

特に役立ったのは、「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン」。これは本当にわかりやすかった。決定版とも言えるでしょう。

 
患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2014年版

 

前置きが長くなりました。

 

まずは大腸がんという臓器について。

大腸は、食べたものを消化・吸収し、最後に排泄するという機能を担う「消化管」の最後尾にある臓器です。つまり、肛門のすぐそこが、大腸の最後。

消化管全体は約10メートルもあるそうで、大腸と呼ばれる部分は約1.5メートル。小腸に続いて「盲腸」「上行結腸」「横行結腸」「下行結腸」「S状結腸」「直腸」というパートに分かれています。もう私は見飽きたけど(笑)図にするとこんな感じです。

 

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さて、がんの治療には大きく2つのカテゴリがあります。

1.標準治療

2.代替療法

 

1は、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療」のことで、

多くの病院では、「治療ガイドライン」に沿った標準治療が行われています。

 

2.は、最先端医療(まだ有効性がはっきり確認されていないものも含まれますね)や、温熱療法や食事療法など、標準治療とされているもの以外の治療法を指すようです。

 

一般的には、がんの治療のための病院にかかると、そのガイドラインに沿った形で、がんのステージに応じて、全国どこでも共通化された標準治療を示されると思います。

ちなみに、がんの3大治療と言う言葉もあって、

1.手術による切除

2.化学療法(抗がん剤

3.放射線療法

が挙げられます。

それこそ千差万別ながんの状態により、どの治療法にするかを医師は判断するわけですね。

 

私の場合は、がんの浸潤(腸の壁にどこまで深く達しているか)が筋層で、リンパ節転移が見られないことから「ステージ1」と診断されたので、1.手術による切除 となりました。

(ちなみに、手術してみたら実はステージ2だった…などと、上がることはあります。ステージは0~4まであり、4が最も進行している状態。)

 

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大腸がんの場合、がんの切除も大きく2タイプあって、

1.内視鏡手術(おしりカメラを入れつつ切り取る方法:お腹は切らない)⇒消化器内科が担当

2.外科手術⇒消化器外科が担当

 

内視鏡なら体への負担は一番少ないので、これで切除できるに越したことはないのですが、私の場合は内視鏡で切り取れるほど浅いがんではなかった。そこそこ深く根付いていたので、外科手術となったわけです。

 

その話はこの記事を参照ください。

c-calorina.hatenadiary.jp

 

そして外科手術にも3タイプありまして、

1.開腹手術:お腹を切り開き、医師の目で直接見て、手で手術する

2.腹腔鏡(ふくくうきょう)手術:炭酸ガスでおなかを膨らませ、お腹に数か所小さな穴をあけて、そこから器具やカメラを体内に入れて、モニタを見ながら手術する

3.ロボット手術:上記のことをロボット(ダヴィンチ)が行う。まさにブラックペアンの世界!

 

わたしは今回2.の腹腔鏡となりました。

腹腔鏡は、がんをカメラで拡大してよくよく見ることが出来たり、出血量が少なく済んだり、傷が小さく術後の痛みが少なかったり、開腹よりも術後の回復が早かったり、術後の癒着や腸閉そくが少ない…といったさまざまなメリットがあります。昔は開腹するしかなかったけれど、いまは技術の進歩で、腹腔鏡が主流だそうで。ありがたい話です。

デメリットとしては、開腹より時間がかかること。高度な技術を要すること。

わたしの手術は約4時間半かかりました。

 

ところで、

 

わたしのがんは、「直腸」に宿っていたので、大腸がんの中でも特に「直腸がん」と言われます。大腸がんのうち、約4割が直腸がんだそうです。結構多いですよね。

 

この直腸の周りには、排便や排尿、性機能を支配する交感神経・副交感神経のネットワークがあるそうで、非常にデリケート。だから直腸の手術は、大腸がんのなかでも難しいんだとか…。

 

そして、直腸のどのあたりにがんが出来ているか。これもかなり重要なポイントになります。手短に言うと、「永久人工肛門になるかどうか」の分かれ道が、肛門からがんまでの距離、と言えます。

 

私の場合、先生が触診できるくらいの近距離にがんがあったことは確かなのですが、5センチくらいは距離があったらしいので、ギリギリ、肛門は切り取らずに済みそうだ、肛門は温存できそうだ、ということでした。

 

ちなみに内田春菊さんの場合は、直腸からの距離が2~3センチと非常に近かったため、肛門温存が難しく…永久人工肛門を造設されました。

 

 通常、がんの前後10センチずつくらい、計20センチ程度の大腸を切除するんだそうで。私の場合は、ほんの数センチは直腸を残してがんを切除し、肛門ぎりぎりのところで縫い合わせました。その縫い目の部分がくっついて治るまでの約3か月は、何者も通してはならぬ!ということで、一時的に人工肛門を造設したのでした。

 

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で、人工肛門っていったい何? 

造設ってどういうこと?

と言うことですが…私も今までの人生で一度も見たことも聞いたこともなく、結構衝撃的なものでした。これについてはまた長い話になりますので、次回へ。

 

内田春菊さんのケースは、こちらの記事が写真満載でとてもわかりやすく、おすすめです。わたしも手術前、こちらを拝読し、春菊さん素敵…と思ったことを思い出します。

bunshun.jp

 

まとめますと、わたしの病状と手術とは、

 

・腫瘍の位置:直腸

・腫瘍の深さ:筋層

・転移:なし

・癌の進行度(Stage):Stage1

・予定手術術式:腹腔鏡下超低位前方切除、人工肛門

 

これらのことは、手術前日に、個室で医師から詳しく説明された内容です。本当にわかりやすかったし、事前に各種参考文献を読み込んでいたから、ああ、私はこのパターンなんだね!と納得できました。

 

事前の放射線治療が必要な場合もあるけど、わたしはそれは必要なかったです。事前検査の結果によっては、必要かも知れなかったので、一時期非常に動揺しましたが…。

c-calorina.hatenadiary.jp

 

患者は、できるだけこのように、自分が受けるであろう治療について、事前の知識を仕入れておくと良いと思います。そうすると、医師からの説明を聞いても、納得度が高まります。いまの標準治療にはどんな方法があって、自分の状態ならこうかな… 化学療法の可能性もあるかな…などと、患者本人も学んでおくに越したことはありません。

 

知識があれば、もし先生の推奨する治療方針に疑問を抱いたとしても、自分の考えを根拠を持って伝えられると思いますし。ガイドラインに書いてあったあの方法は私にはどうなんですか?とかね…。

 

がんと言われたら、怖くて、調べものどころではないかも知れません。が、知らないことが実は一番怖いことだと思っています。自分の状態を知り、それに対してどのような対処法があるかを知れば、納得し、落ち着いて治療を受けられると思います。知らなかった!じゃ済まされないですよね。自分の身体のことですから。知ってあげないと!